次の物語が始まる

キャリアカウンセリングのセッションの中盤あたり。
「ここで今、話していいか分からないんですけど…。」
「どうぞどうぞ、聴かせて下さい。」
このような会話に続いて、クライエントが長いこと誰にも打ち明けずに独り静かに抱えて来た経験が語られることがある。
成長した自分に優しく手を差し伸べられるのを、長いこと待っていたかのような、過去の物語。
ナラティヴ・アプローチに誘われて思考の連なるまましっかりと語り直して、少し今の自分に意識が戻って来た頃。私は「今の自分がその時の自分に声をかけるなら、何て言ってあげますか?」と問いかけるようにしている。
川岸のポジションから、川の急流を振り返り投げかけられる言葉は、捉われそのものを尊重し、受け入れ、あたたかく励まし、見守り、そして慈愛に満ちている。
私は、その言葉・認識・意味が世の中に生まれ出る瞬間に立ち会えることにこの上ない喜びを感じる。
聴かせてくれて、ありがとう。
人は自らを癒す力を持っている。固く閉まっていたドアは、条件が揃えば自ずと開く。そして開いた時にはもう、次の物語が始まっている。

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