読了『家族療法学―その実践と形成史のリーディング・テキスト』リン・ホフマン(著)
家族療法家であるリン・ホフマンが生まれてから、どのように家族療法に取り組んできたのかについて、その時々の臨床家、理論を事例を用いながら述べてくれています。事例のところで、英語の名前が羅列されるので、誰が誰だったのか見失うことがありましたが、それ以外は読みやすいです。翻訳もよかったと思います。また、リン・ホフマンがさまざまな比喩を用いて説明しているのですが、その比喩も気が利いていてよかったです。
さて、本書の前半で、初期の家族療法において、どのようなことを目指していたのだということがよく分かります。『家族療法の基礎理論:創始者と主要なアプローチ』でもしっかりと説明されているのですが、本書の方が概観を見通すには適しているように思いました。
『家族療法の基礎理論』では、私が取り組んでいるパラダイムまで到達していなかったので、少し不十分感があったのですが、本書は、ハリー・グーリシャンやハーレーン・アンダーソンのコラボレイティヴ・アプローチ、トム・アンデルセンのリフレクティング・チーム、そして、マイケル・ホワイトとデイヴィッド・エプストンのナラティヴ・セラピーまで書いてくれています。
初期の家族療法は、セラピストが主導でものごとを進めようとしてきたのだと理解できます。そこから、相手を尊重し、協働して取り組むというところまで、たどり着いたのだということがよく分かりました。第3部に入ったあたりで、私が馴染む世界に来たという感じがしました。
私は最初からナラティヴ・セラピーに取り組んできたのであまり実感が伴わないところがあるので、このようなパラダイムの変更に遅れまいとしてなんとかついていこうとしてきたのだということが理解できます。『協働するカウンセリングと心理療法』を書いたカナダのデイヴィッド・パレも、時代に遅れないように努力してきたと書いていますが、家族療法はまさにたいへんな変化を経てきたのだと思いました。
リン・ホフマンは、書籍の冒頭で、次のように述べています。
「家族療法の分野を査定するには、今が好機到来の時期だといえるでしょう。(中略)まず家族療法が個人療法を負かし、システム療法が家族療法を、フェミニスト療法がシステム療法を、多文化療法がフェミニスト療法を、等々、つぎつぎに入れ替わるように相手を負かしていったのです。(中略)これらのモデルは、それぞれ異なった場所にある苦悩を対象としています。その対処法も異なっています。それぞれに長所もあり、いずれかを選ぶということはそれほど容易ではありません。(中略)
家族療法の本当の最大ヒットは、おそらくそれ自身が自分を折りたたんで変化する力を持っていたことでしょう。」リン・ホフマン(2002)『家族療法学ーその実践と形成史のリーディング・テキスト』邦訳13-14頁
グーリシャンとアンダーソンの言葉であると記憶しているのですが、相手に変化を求めるのであれば、自分が変化するリスクを負う必要があると述べています。私たちは、これを自身に求めることを忘れてはいけないのだと思いました。
現在は古本しか入手できませんが、まだ流通していますので、興味のある方は是非。おすすめです。
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