治療的会話の技術を向上させるために(その4)

今回は、アウトサイダーウィットネス&リフレクティング・チームを活用することによって、今まで述べてきたことに対応できるのではないかと考えていることについて検討してみます。

これまでの投稿はこちらから読むことができます。

「その1(https://narrativeassembly.com/2018/792/)」

「その2(https://narrativeassembly.com/2018/852/)」

「その3(https://narrativeassembly.com/2018/860/)」

 

アウトサイダーウィットネス&リフレクティング・チームとは、カウンセラーとクライエントの会話がおこなわれている場にグループ(2〜4名ほど)で参加することによって、クライエントに対するカウンセリングのプロセスを支援し、促進するものです。

 

構造的にはそれほど難しくありません。カウンセラーとクライエントが会話をおこなっているところを、チームはそれの妨げにならないようにしてその会話を聞きます。妨げにならないために、ワンウエイミラーで遮られた別の部屋にいることもできますし、同じ部屋の中で仕切りを設け、クライアント側から見えないようにすることもできます。

その日のセッションがあるところまで来たところで、チームはチーム内で、会話を聞いたことについて話をしていきます。その話を、クライエントとカウンセラーが聞くことになるのです。このときに、クライエントに直接話しかけることはしません。またクライエントが会話に参加することもありません。

その後、クライエントとカウンセラーの会話に戻り、チームの会話から印象に残ったこと、そこから考えられたこと、気づいたことなどについてカウンセラーと語っていくのです。

 

この検討で最初から述べているように、このようなチームを組み込んだカウンセリングのシステムこそが、①クライエントのためにより良いセッションを提供すること、②カウンセラーがチームによって支援を受けながらカウンセリングができること、③カウンセラーが自分のカウンセリングのプロセスを振り返ることができること、そして④初心のものがカウンセリングを学ぶ機会を提供できるのではないかと考えているのです。

このフォーマットについて暫く考えていますが、一石四鳥ともいえるようなやり方なので、大きな可能性を秘めていると考えています。

それぞれの状況について説明してきます。

 

① クライエント体験として、チームが存在することは一種の脅威となる可能性を秘めていることには気づいています。しかし、セッションの会話の中から、チームが大切だと思ったことを拾い、今までのクライエントの人生の証人となり、今後の可能性を示唆するようなことがらを見出してくれることは、クライエントにとって大きなことになります。

そして、できるものであれば、セッションのあとで、チームがクライエントに手紙を書いたりすることもできるのではないでしょうか。

 

② カウンセラーにとって、セッション中にいろいろな側面の会話が出てきた場合、拾い損ねたり、焦点を当てることが十分ではなかったり、どの方向性に向かったらいいのか悩むことがあります。また袋小路に入ってしまった場合にも助けが必要になります。そこで、その話を聞いてくれており、後にクライエントに対して、重要だと思われるリフレクションを提供してくれる人は、カウンセラーのストレスを和らげてくれる可能性が十分にあるはずです。

当然のことながら、これも、密室の中でしかカウンセリングをしたことのないカウンセラーにとっては脅威となる可能性があることは理解していますが、チームがカウンセラーを批判するためにいるのではないことが分かればそれも和らぐでしょう。

そして何より、人に自分のカウンセリングを見られることが当然だという文化もつくる必要があるのです。

 

③ チームは、セッションの中で、クライエントのストーリーに対して、リフレクションするのであって、カウンセラーに助言などをすることはありません。しかし、このリフレクションのことを聞き、それをどのようにクライエントが取り上げるのかを、直接その場で確認できることは、自分のカウンセリングを振り返る貴重な機会になることでしょう。

このその場における、自分のカウンセリングセッションの振り返りは、通常のスーパービジョンのセッションでは対応できないものです。そして、その場ですぐできるということ自体、たいへん気づきが多いものになるでしょう。

 

④ さて、チームのことについて述べて見ましょう。このチームでは、ある程度このプロセスに慣れている人が参加する必要は当然あるのですが、すべての参加者が熟練している必要はありません。つまり、カウンセリングに初心のもの、研修中のものなどが参加することができるのです。

何よりもリッチな経験になり得るのは、生のカウンセリングを直接見聞きする機会を持てるということです。それも、このフォーマットを標準とする場では、何度でも見ることができます。

そしてさらに、リフレクションを提供するときに、クライエントの人生にかかわる機会もあるのです。自分のリフレクションを、クライエントが取り上げてくれる体験は、貴重なものとなるでしょう。

 

いくつかの課題について検討してみます。

  1. 自分のカウンセリングを提供してもいいと思うカウンセラーが必要となります。これは、チームがついてくれている状況で、カウンセリングをすることがとても安心できるものであるということを体験することができれば、可能ではないかと思います。
  2. チームメンバーの調達ですが、これは、生のカウンセリングを見て、チームとしてかかわる機会があるということであれば、協力してくれる人を募るのは難しいことではない気がしています。さらに、大学教育、あるいは大学院教育のなかで、実習が必要な場合には、連携して学生を受け入れることさえ可能になるかもしれません。(当然、リフレクションの仕方などの、初歩的な研修は受けてもらいます)

 

ここまで検討してきて、やはり、やってみるしかないという気持ちになっています。