マーチン・ペイン著「カップル・カウンセリング」

ナラティヴ・メディエーションに関するワークショップの依頼があったので、ナラティヴ・メディエーションだけでなく、カップル・カウンセリングについても、調べ始めています。

まず、Amazonでこの領域に対する書籍を調べて見ても、あまり出版されているようではありません。相談業務をしていて、夫婦関係のことだけに留まらず、誰かとの関係を扱うことは、多くあろうと思います。実際に必要にもかかわらず、文献があまり紹介されていないのはどういうことなのだろうかと不思議に思っているところです。

日本では、二人まとめてセッションをすることは、あまりないのかもしれません。ニュージーランドでは、カップルで何かうまくいかないところがある場合には、カップル・カウンセリングは、選択肢の1つとしてあります。ですので、相談業務をしているとカップル・カウンセリングを提供する機会はあります。

ナラティヴ・セラピーでは、伝統的な個人主義的な見方で人を捉えるのではなく、関係性の中で捉えようとします。伝統的なアプローチをベースにするとなれば、複数を相手にするセッションとなると、問題を解決すべき個人が複数存在してしまいますし、一緒に扱うことはかなり難しいと感じられそうです。

家族療法では、カップルまたは家族をシステムとしてみるため、一緒に扱える視点を持つことができるので、みんなまとめてセッションをすることを可能にします。

ナラティヴ・セラピーでは、家族療法の流れを汲みながらも、システム論を採用していません。そうではなく、それぞれの間の関係性そのものに焦点をあてるのです。それは、外在化という視点を手にすると、個人のほかに「関係性」という要素も加味して検討することができるということです。

ですので、今私が想像するのは、カップル・カウンセリングのような複数を対象とするセッションに対して、ナラティヴ・セラピーは相性がいいのではないか、ということです。実際のところを、マイケル・ホワイトの書籍に掲載される事例を見ると、一対一のセッションの方が少ないのではないかと思うぐらいです。

そのような中で、カップル・カウンセリングについて調べようとしていたら、マーチン・ペインが「カップル・カウンセリング」という本を書いていましたので、早速読んでみました。

マーチン・ペインは、「ナラティヴ・セラピー」という入門書を出版していて、私も翻訳したいと思っていたのですが、時間を見つけることができずに時間だけが経ってしまっていました。

ですので、この「カップル・カウンセリング」は、ナラティヴ・セラピーをベースとして検討されています。

目次構成
・ はじめに
・ パート1 方向性と実践
 1.通常のカウンセリングとカップル・カウンセリング
 2.ナラティヴ・セラピー
・ パート2 カウンセラーとカップルに与える社会文化的影響
 3.文化的に形成されるカップル関係に対する考え方
 4.性的志向や文化的背景が異なるカップルに対するカウンセリング
・ パート3 カウンセリングの流れ
 5.初回のジョイント・セッションの枠組み
 6.初回以降のジョイント・セッション
 7.個別セッション
 8.発展的な実践
・パート4 カップル・カウンセリングのさまざまな課題
 9.火に油を注ぐような緊張
 10.友人や家族とのトラブル
 11.性的な問題
 12.不貞
 13.暴力と虐待

本書を読んで、比較的構造化されたプロセスが提示されています。このプロセスを追うためには、しっかりとした基本技術が要求されるのですが、カップル・カウンセリングに実践経験豊富な臨床家が提示しているものですので、大いに参考になりそうです。

カップル関係ならではのことも、章を分けて検討してあります。マーチン・ペインは、比較的読みやすく書いてくれているので、多くの人に参考にしてもらえるのではないかと思います。

翻訳できないか検討してみます。でも、時間がかかりますので、それを待ていない方はは、英文でどうぞ。