相手の話を返すときに大切になるのは、語尾です

あなたの話をしっかりと聴きました。あなたの話をしっかりと受け取りました。このようなことが相手にしっかり伝えるためには、相手の方向を向いて話を聴く、頷く、相づちをうつということがあるでしょう。

中身までしっかりと受け取ったということを伝えるためには、相手の語った言葉そのものを、復唱して返すということも大切になります。時に、相手の語りが長い場合には、こちらが要約して返すことが大切になるでしょう。それも、相手の使った言葉を用いて要約する必要があります。

相手の言葉をどのように要約することができるのかについては、いろいろと検討できるし、興味深いことであると思っています。しかし、今日はそこの部分ではなく、私たちが相手の言葉を返すときに用いる語尾についてすこし考えてみたいと思います。

1つの例を使って検討を進めましょう。
人に裏切られてという話があったとしましょう。それは、昔からの友人であり、信頼していたので、余計にショックというような話です。

相手の言葉を使って返すというのは、「そんなひどいことがあったのね」とか、「辛かったでしょう」、「ひどい人がいたものね」というようなことでありません。それは、「人に裏切られたのですね。それが、昔からの友人で、信頼もしていたので、余計にショックということなのですね」というふうに返すとことです。

この時に、単に返すということだけでなく、相手に確認を促すような側面が強くなるときがあります。たとえば、「裏切られたのは、昔からの友人なので、余計にショックなのよね?」というように、相手が言ったことについて、しっかりと確認をするように求めるような姿勢がでてきてしまうのです。

そうすると、自分の語ったことにより目を向けさせるような指示となってしまう可能性があります。もしかしたら、ショックであることを表現してから、次のことを語りたいと思っている時に、そちらに目を向けさせるとことは、愛他の語りのフローを変えてしまうことになるでしょう。

相手の話を受領したことは伝えたい、でも、そこからどこを語るかは相手に委ねたいのだと伝えたい時には、どうしたらいいのかだろうかという検討をする必要があります。

そのためには、1つの案として、相手が話したことをフラットに返すということができます。
たとえば、
「人に裏切られ、それが、昔からの友人で、信頼もしていたので、余計にショックなんだ、ということをお聞きしました」 
「人に裏切られ、それが、昔からの友人で、信頼もしていたので、余計にショックなんだ、と話されましたね」
「人に裏切られ、それが、昔からの友人で、信頼もしていたので、余計にショックなんだ、ということですね」

このように言葉をフラットに返して、相手の語りを待つということができるでしょう。

また、もっと語りを積極的に促すという返し方も考えることができます。

「人に裏切られ、それが、昔からの友人で、信頼もしていたので、余計にショック、ということですが、もっとお聞きしてもいいですか?」
「人に裏切られ、それが、昔からの友人で、信頼もしていたので、余計にショック、ということの他にもっと語っておきたいことがありますか?」
「人に裏切られ、それが、昔からの友人で、信頼もしていたので、余計にショック、ということですね。そして、それがどのようなことなのかもう少し教えてもらえないでしょうか?」
「人に裏切られ、それが、昔からの友人で、信頼もしていたので、余計にショック・・・(語尾を濁して、相手の語りを促す)」

相手がどの部分を話そうとするかは、私たちの言葉かけ、それも語尾によって結構影響を受けている部分があると考えています。それは次の質問を比べれば、よく分かるのではないでしょうか。それぞれの訊き方によって、自分の中のどの領域を話そうとするのかが異なってくると思います。

「○○できそうですか?」
「○○する気持ちはどこかにありそうですか?」
「○○する気持ちになれそうですか?」

人に言葉を返すといういう行為、そして、人に問いかけるという行為は、実に興味深いことで、みんなで取り組む必要性があることであると思うのです。

もうひとつ興味深いことは、英語において、自分の言葉に曖昧さ、不確実さを含ませる為に大切なのは、文頭のところです。

May I ask…
Can I may say like …
I might hear from you that …

日本語は語尾なのです。言語は興味深いです。